
「アタシ、栄養士の資格持ってるんだぁ。」
今日のお相手さんが言った。
「へぇ。」
僕はそっけなく返して、尋ねた。
「何か、そういう仕事に就きたかったの?」
すでに服を脱いだ僕は、お風呂にゆったりと浸かっていた。
「違うの。」
彼女は返した。
今日のお相手さんはちょっと変わっていた。
通された階段の踊り場に座って待っていた。
普通は立ったまま、手を取ってくれるのに、
彼女はしばらく僕を見て、やっと立ち上がって僕を部屋へと案内した。
背は高いほう。ちょっと胸がさみしいくらい。
声はちょっと低め。
でも、美人な顔立ちだった。
もっとも薄暗い場所だったから、顔もよく覚えてないけど。
「ウチさぁ、親があんまり体強いほうじゃないんだよね。」
「病気か何か?」
「ううん、もうトシだから。それで栄養士の資格を取ったんだよ。」
「じゃあ、親御さんの面倒を見てあげる為に?」
「そう。だから食事もアタシが準備してあげてるの。」
「へぇ。えらいじゃん。」
「えらいでしょ?へへ。」
裸の彼女は満面の笑みで返した。
「お客さんはどんな仕事してるの?」
「まぁ、サービス業かな。」
「何か資格持ってるの?」
「いや、今取るため勉強中。」
ウソである。資格はほしいが、勉強嫌いだからやっていない。
「難しいの?」
「まぁ、国家資格だからね。毎年合格者も少ないし。」
「へぇ、大変だね。」
「うん、まぁね。」
湯舟で手で湯をすくって、僕は顔を洗った。
「そろそろあがってもらえる?」
「ん。」
お相手さんに促されて、僕は湯舟から出た。
彼女のサービスを受ける時間だ。
「まだ、時間あるね。」
「そうだろうね。」
さっさと果ててしまった僕は苦笑いした。
彼女は相変わらず笑顔だ。
「ね、マッサージしてあげようか?」
「え?いいの。」
「うん、こっちに横になって。」
彼女は丁寧に肩から揉み解してくれた。
あんまりの気持ち良さに、いつしか僕はうたた寝していた。
「今夜はありがとう。また来てね。」
「うん。」
彼女は笑みを浮かべながら、また階段の踊り場に座り込んだ。
そのまま次のお客さんを待つのだろうか。
その答えを知ることもなく、僕は店を出た。
「アタシ、栄養士の資格持ってるんだぁ。」
彼女の言葉を思い出した。
ホントの話かどうかは分からない。
でも、あの話しっぷりはまんざらウソでもなさそうだった。
きちんとした目標も立てず、のんべんだらりとやってる僕に比べれば、
彼女のほうがしっかりしている。
「なんだかねぇ。」
僕は歩きながら地面へ向かって、深いため息をついた。
まだ明日の日付になるまで、あと1時間以上はあった。
(終)
※この作品は、はっきり言ってノンフィクションに近いです。(笑)
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